EP15 では、Day 112 から Day 121 までを書いた。自分の会社の毎日を、そのままロールプレイングゲームとして運用している Hiro が、撮影所——毎日書いて公開している記録を、60秒の YouTube ショートに作り変えるための手順とプログラムの一式だ——を実際に回し、その見積もりを確かめた10日間。かかる費用のほうは、見積もりどおりほぼゼロだった。手間のほうは、ゼロには程遠かった。その撮影所には、Hiro 自身が書いた完成の条件がついている。1本出せた時点は通過点にすぎない。積み上がった記録を使い回すだけで、作る手間が実質ゼロに収束したときが完成だ、と。効率のために建て、効率の条件で完成を測る。そういう見立てだった。毎日をこうしてゲームとして動かす仕組みの作り方は、仕事をRPGに変える方法で解説している。
この EP16 は、その続きの12日間。Day 122 から Day 133 までの記録である。
見立ては、この12日間で崩れる。ただし、期待した方向にではない。はじめの三日は、撮影所を毎日回すための作業環境を整える時間だった。毎日回すというのは、AI に実際の作業をさせ続けるということでもある。AI が何かを実行しようとするたび、それが許してある動作かどうかを一覧と照らし合わせ、載っていなければ手を止めるチェックプログラム。それが一日に15回以上、作業を止めるようになっていた。325行に膨れた許可を75行まで削り、絶対に通さないもの25件を決めて、一件ずつ実際に命令を出して拒否されるか確かめた。その翌朝、決めたばかりの拒否に最初に引っかかったのは、Hiro が毎朝いちばん先に走らせる起動の命令だった。
四日目、AI に任せた動画の見栄えの改修が上がってきた。場面の切り替わりに閃光を入れ、字幕を弾ませる。尺が一秒も伸びない、これまでの台本21本が一本も直さずに通る——事前に決めておいた六つの条件は、すべて満たしている。それでも Hiro は突き返した。効果は入っている。だが、その日を過ごした当人が見ても、何の話だか分からない。台本を元の記録と並べ直すと、「土台(サーバーを動かす言語)」が「土台」に、7箇所すべてで括弧の中の説明だけが落ちていた。削られていたのは、飾りではなく実体のほうだった。
数字も、同じことを返してきた。動画の最初の5秒を埋める見出しに連載の標語——人生という最高のゲームを遊び尽くせ——を掲げた1本は、その5秒を超えて残った人の割合で並べると9本中の最下位。いちばん上にあったのは「自分で作った動画が、自分でも分からない。」——その日の朝、Hiro 自身が画面の前で口にしたのと、ほとんど同じ一文だった。そして Day 130、毎日のショートとは別に、連載そのものの予告映像を作りはじめる。ドット書体を全廃し、冒頭を書き直し、散らす演出を消す。かくつきの原因は、文字が流れる速さ——一コマ35.8画素、滑らかに見える目安の倍以上だ——にあった。同じ映像を、一日のうちに六本目まで作り直した。翌日、二分十七秒・十九場面で仕上げ、最後の八秒に五文字を置いた。「遊び尽くせ」。
最終日、七月に出した本の出版日を書き足すつもりで、毎週の訪問者数と検索語を積んでいく帳面を開いた。空だった。集計を流し込む工程が、六週間止まっていた。数字そのものは、Hiro が毎日、自分の目で見ていた。見えていたから困らず、困らないから六週間気づかなかった。その夜、Lv41。この12日間でレベルは五つ上がり、段位も職人から熟練者へ動いた。一日の行動を換算した経験値は、初日の826から最終日の6,325へ、7.7倍になっている。
それでも、完成の条件——作る手間が実質ゼロ——には近づいていない。手間は、増えている。遠ざかっていたのは Hiro ではなく、条件のほうだった。効率の道具として建てた場所で、Hiro はいつのまにか毎日を過ごすようになっていた。住んでいる人間にとって、そこは道具ではない。手を入れる時間は、費用ではない。Day 122-133、建てた場所に、住みはじめた。この冒険の詳細は Note でご覧ください。
▼ この冒険の詳細は Note で
ゲーミフィケーション実践記EP16|仕事と人生を完全没入型ゲームにしてみた|DAY122-DAY133:建てた場所に、住みはじめた ── 撮影所に飲み込まれていった12日間
▼ マガジン全話一覧「仕事と人生を完全没入型ゲームにしてみた」
https://note.com/kindboss_hiro/m/m4307ead0ed4d
▼ シリーズの起点・統合プロフィール記事
https://note.com/kindboss_hiro/n/n9861b7b58389