EP20 では、Day 158 から Day 166 までを書いた。自分の会社の毎日を、そのままロールプレイングゲームとして運用している Hiro が、確かめる相手を選び直した9日間。やったことを点数に換算し、貯まればレベルが上がり、節目ごとに段位が変わる。毎日出している短い動画の再生時間は、直近28日で集計すると増えていたのに、7日に縮めて測ると前の週より64パーセント減っていた。減りはじめたのは、説明欄の1行目の文を変えた日から。説明欄を組み立てる仕組みは読んでいたのに、流し込まれる文そのものは見ていなかった。確かめるときは、実体——名前でも、集計でも、要約でもない、確かめられる現物——のほうを出してくる、と決めた巻だ。Lv62 だった。
この EP21 は、その続きの9日間。Day 167 から Day 175 までの記録である。
この9日間の話は、確かめるより手前——言葉や数字が相手の手に渡った時点で起きていたことだ。この巻の言葉は受け取られ方——言った側がどういうつもりだったかではなく、受け取った側が、それを何として読んだか。相手は AI のことも、Hiro 自身のこともある。Day 167、AI は、読み上げの合成音声が語の終わりの上がり下がりを外したかを数字で判定し、「浅く下がっている」を「外れている」と読んでいた。聴き比べると、浅くても下がって終われば耳には下がって聞こえる。境目は落差の浅さではなく、終わりの向きだった。同じ出来事にどんな意味を付けるかは、受け取る側で決まる。それを自分の側から使う考え方は、人の目が気になるのは、欠点ではない——意味は、いつも自分が決めているで解説している。
Day 168、毎朝開く、進行中の案件を並べた一覧で「Hiro の判断待ち」と書かれた34件を1件ずつ実物に当てると、14件、41パーセントがすでに済んでいた。行を書くのはその日に作業をしていた AI で、作業を終えるのは別の日の Hiro か、別の AI。その行は開かれるたびに「いまも待っている」と読まれ続けた。一覧の膨らみを見張る点検も前からあり、警告は出ていたが、読む人がいなかった。Day 169 は、一分半の動画を公開用の滑らかな版で書き出すのに25分かかっていた話だ。パソコンの性能が決めた時間だと受け取っていたが、決めていたのは作り方だった。映像の圧縮を専用の回路に任せて252秒へ。場面ごとに作って最後に繋ぐ形に変えて、一場面の直しはおよそ30秒になった。
山場は Day 170。前日の動画の音の直し6点を聴いて AI に「OK」と返すと、AI は公開用の書き出しから YouTube への非公開送信まで進めていた。Hiro はまだ、映像と音を合わせた最終の版を見ていない。「私が OK したのは、音声の OK です」。同じ朝、場面ごとの映り方に返した「Good」に続いて二度目だった。同じ日、音の小さな揺れを場面末尾の無音で埋め合わせる仕組みの呼び名「尺(場面の長さ)のロック」を、別の AI が「場面の長さを固定した」と読んで記録に書いていた。サイトでも、昔の住所(URL)を受け止めるつもりの転送の条件が、存在しない住所すべてに当たっていた。不審なアクセスを止める設定の「AI の検索ロボットは許可」の一行は、そう名乗るもの全部を通していた。
夜までに、まとめて直した。言葉や設定がどこまでを指すのかを、受け取る側の読みに任せず、こちらで決めて書き残す。承認は演出・音・最終の段ごとに、Hiro の言った言葉のまま記録し、最終の承認が無ければ、書き出しも送信も仕組みのほうが止める。転送は実在した昔の住所12種に限った。Day 175 には、動画を作る手順書の「字幕とナレーションは同じ内容にする」が「同じ文にする」と読まれ、字幕が読み上げと一字一句同じになっていた。直す途中で、最後の場面の字幕が音声より4秒遅れて出ていたことも分かった。ひと月近く前に作った、字幕の出し方を決める設定のひな形の4.2秒が、全回に引き写されていた。全部が同じ値だったから、誰も疑わなかった。揃っていることは、正しいことの証拠にならない。
この9日間、レベルは一つも上がらなかった。連載で初めての、レベルが上がらない巻だ。得た点数は合計67,536、一日あたり7,504。レベルに要る点数は一日18,000点を積む前提で決めてあり、二つ前の巻の9日間はそれより3割多く、前の巻は6パーセント多く、今回は4割ほど。値は集計する9日ごとにこれだけ動く。レベルの表を四度目に作り直すかどうかは、まだ決めていない。三つ前の巻から、確かめ方を作り、決まりの出所を辿れるようにし、確かめる相手を実物にしてきた。この巻で足したのは、渡した言葉の範囲を、受け取る側が読める形で残し、機械に守らせる一手だ。Lv62 の賢者のまま。Day 167-175、そのOKは、音のOKだった。この冒険の詳細は Note でご覧ください。
▼ この冒険の詳細は Note で
ゲーミフィケーション実践記EP21|仕事と人生を完全没入型ゲームにしてみた|DAY167-DAY175:そのOKは、音のOKだった ── 9日でレベルは据え置き、言葉の受け取られ方を確かめ直した9日間
▼ マガジン全話一覧「仕事と人生を完全没入型ゲームにしてみた」
https://note.com/kindboss_hiro/m/m4307ead0ed4d
▼ シリーズの起点・統合プロフィール記事
https://note.com/kindboss_hiro/n/n9861b7b58389