「5Sって工場でやるものでしょう?」そう思っている方は少なくありません。
実際、5S活動は製造業の現場改善手法として広まりました。しかし、その本質は「ムダを排除し、仕事の質とスピードを高める仕組みづくり」にあります。事務処理の現場にも、探し物、二度手間、確認漏れといったムダは山ほどあります。本記事では、5Sの考え方を事務処理に応用する基本的な視点をお伝えします。
5Sとは何か — 改めて整理する
5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとった改善活動の基本フレームワークです。
- 整理(Seiri): 要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てる
- 整頓(Seiton): 要るものを使いやすい場所に、誰でもわかるように置く
- 清掃(Seisou): 汚れを取り除き、異常に気づける状態にする
- 清潔(Seiketsu): 整理・整頓・清掃の状態を標準化し、維持する
- 躾(Shitsuke): 決めたルールを守り続ける習慣をつくる
製造現場では、工具の配置や作業台の管理として実践されます。では、事務処理ではどうでしょうか。
事務処理における「5つのムダ」
製造現場の5Sが「モノの流れ」を改善するのに対し、事務処理の5Sは「情報の流れ」を改善します。事務処理の現場には、次のようなムダが潜んでいます。
1. 探すムダ: 書類がどこにあるかわからない。共有フォルダの中で目的のファイルを探し回る。ある調査では、ビジネスパーソンは1日あたり平均36分を「探し物」に費やしているとされています。
2. 待つムダ: 承認待ち、確認待ち、回答待ちで仕事が止まる。「あの件、どうなりましたか?」という催促メールが日常になっていないでしょうか。
3. 戻すムダ: 入力ミスや記載漏れで差し戻しが発生する。やり直しにかかる時間は、最初から正しく処理する時間の3倍以上かかるとも言われます。
4. 迷うムダ: 手順やルールが属人化しており、担当者によってやり方が違う。「この場合はどうすればいいんですか?」という質問が頻発する職場は要注意です。
5. 溜めるムダ: 処理すべき書類やメールが滞留し、締切直前に慌てて対応する。結果として確認が甘くなり、ミスにつながります。
5Sの本質は「仕組みで人を助ける」こと
ここで重要なのは、5Sは「きれいにしましょう」という精神論ではないということです。
5Sの本質は、仕組みによって、人がミスしにくく、迷わず、スムーズに仕事できる環境をつくることにあります。
たとえば、整理整頓が行き届いたオフィスでは、新しく配属されたメンバーでも「どこに何があるか」がすぐにわかります。ルールが明文化されていれば、「この場合はどうすれば?」と迷う時間がなくなります。
つまり、5Sは個人の努力に頼るのではなく、環境と仕組みの力で業務品質を底上げするアプローチなのです。
事務処理に5Sを導入する3つのステップ
では、実際に事務処理の現場で5Sを始めるには、何から手をつければよいのでしょうか。
ステップ1: まず「見える化」する
改善の第一歩は、現状を把握することです。自分のデスク周り、PCのデスクトップ、共有フォルダ、メールの受信トレイを見渡してみてください。不要な書類、使っていないファイル、読んでいないメールがどれだけあるか。まずはその「量」を認識することが出発点です。
ステップ2: 「要・不要」の判断基準を決める
整理の鍵は判断基準です。「いつか使うかもしれない」は、ほとんどの場合「使わない」と同義です。目安として「直近3ヶ月以内に使ったか?」を基準にすると判断しやすくなります。不要と判断したものは、思い切って処分(アーカイブ)しましょう。
ステップ3: 小さく始めて、続ける
いきなり全社で5Sを展開しようとすると、必ず失敗します。まずは自分のデスク1つ、共有フォルダ1つから始めてください。週に1回、15分だけ整理の時間を設ける。この「小さな改善の積み重ね」が、半年後に大きな差を生みます。
まとめ
5Sは製造現場の専売特許ではありません。事務処理の現場にも「探すムダ」「戻すムダ」「迷うムダ」は確実に存在します。5Sの本質である「仕組みで人を助ける」という考え方を取り入れることで、事務処理の効率と品質は着実に向上します。
次回は、5Sの最初の2つ「整理」「整頓」を、デスク周りとデジタルファイルの両面から具体的に実践する方法をご紹介します。
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